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トップハート物語(30)苦闘開業編
10/08/26
まだ介護保険事業所の指定が下りて居ないので事業も始まっていないから仕事がない。常勤の彼女の仕事も考えないといけない。給与がどうなるか分からなかった。会社の支払いがなされなければ、当然去る事になる。色んな戸惑いもあったが、社長に下らない事で邪魔されず仕事が出来る解放感もあった。
 突然社長から電話が入って来た。
「あそこの備品は、あいつのだ。あいつが入れないなら、持って帰るのは当たり前だ。早く結果を出せ。資金は出さない。自分達で稼いで、自分達だけでやれ。」
 そんな言葉を投げかけて、一方的に電話を切った。「あいつ」とは勿論社長夫人の事だ。本業である工場でも、新規の介護事業所でも排斥に合うのは何か問題があるのではないかと考えるのが夫として、社長として当たり前のことだが、それが出来ない。盲目に、夫人をかばう事だけで他の者の諫言は眼中にない。給与は出そうなのでまずは安心した。私が、何か文句を言うのを待っているようだったが、私は一切何も言わない。まず、日銭を稼がないと資金がない。考えられることからしようと検討した。同時に、訪問介護指定申請書類を作成して府庁に申請に行った。少しずつ、社長夫婦に邪魔されながらも作成を続けていたし、この手の事務処理は行政書士の資格も所持しているし当然実務も長かったので、問題なく受理された。申請書は受理されれば、もう安心だ。下りたと同じだ。
 まず、近隣の高齢者を集めて映画鑑賞会をすることを企画した。幸い、広いフロアがある。そこに、ビデオレンタル店で借りた古い映画を上映する。合間に喫茶などを入れる。その軽食を交えた喫茶代を500円くらいの料金を考えた。確か、社長が映写設備を持っていた筈だ。スクリーンから全て一式を借りたいと思い切って申し込んだ。直接面と向かって頼めば断れない性格だ。借りて近隣に手作りのパンフレットを撒いた。そのコピーも会社のコピーを借りて、作成した。結果は惨憺たるもので、2名の参加者だった。それに、日当たりが悪い立地で、5月だというのに部屋は寒々として、暖房設備が無く上映した「駅」を楽しむ気持ちが得られなかった。大入りを期待した企画は失敗したのだ。その時に、やはり自分でいいアイデアだと考える事と他人が思う事とは違うということを肝に銘じて、以後相手の立場や思いを第一に考えるようになった。
続いて考えたのは、弁当の販売だった。その許可を貰いに、地元の保健所に行った。食品衛生責任者の講習を受ける事が必要なので、その申し込みを行った。始まるまでの間、私のせっかちな性格で、試験的に販売してみようと思った。コメは「あきたこまち」を使用して、鮭のあらを買って来て、焼いてほぐす。それを混ぜて、海苔のついていないおにぎりを作る。ラップに包んで1個60円。事務所の前を通る、近所の幼稚園に行くお母さんがよく買ってくれた。近所の独居の方が、沢山買って冷蔵庫に入れて保存して置き、日曜日などにチンして食べるという。スーパーでバーゲンのウナギを買って来て、半分に切ってご飯に載せるだけ。保温器を持って来て、保存しながら入口を開けて売った。これが、お金が喉から手が出るほど欲しかった「私」の思いからすれば売れた。利益率は50%だった。毎日3000円前後の入金だった。だから、1500円の利益だ。暫くは続いたが、止めてしまった。それは、社長から横やりが入ったのだ。
「自分達がそのスペースで喫茶室をするので、イメージが悪くなる。」
というのだ。
この販売を通じてスーパーに買い出しに行ったが、ここの言葉に惑わされたのが2ケースあった。まず「いちば」という言葉だ。市場があそこにあるとか言われて、行ってみるとない。市場=スーパーなどの店舗の事か。もう一つは、「おんせん」だ。温泉があると言われて行ってみると、普通の銭湯だった。まやかしやごまかしがごく自然の地域と知った。
今度は小物を展示して販売した。少しは売れたが、また社長からクレームがあり止めた。資金プールには程遠かった。そんな「私」苦闘を見兼ねて、近隣の方が声を掛けてくれた。
「私の家に、不用品が沢山あるから持って行ってバザーで売りなさい。娘が、戻って来て置いてある。瀬戸物なんか沢山あるから。」
そう言ってくれたが、バザーなど果たして人が来るのか、そんな疑問があったが、郷に入れば郷に従えで、何度も販売するものを紙袋に入れ運んで、フロアに置いた。

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