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トップハート物語(431)立志伝昇竜編
11/12/25
2003年(平成15年)6月下旬。毎週木曜日は、遠距離通院介助。朝7時には会社を出て、利用者宅へ向う。7時20分には、預かっている鍵で利用者宅のドアを開けて中に入る。90歳にして、独居、自炊。五感は健在。足が少々悪くて、杖が必要。
 3週間前に援助を始めたが、その時には担当ケアマネジャーが心配で心配で、何度も何度も電話を掛けて来て、失敗しないようにと何となく分るような分らないような指示をして来た。
 案ずるより産むが安し。困難事例、身体的ではなく精神的な説明のしにくいものがあり、ケアマネジャーは言葉ではプライドとしか言わなかったが、それが顕著で我慢我慢と助言してくれた。しかし、その心配をよそに何とかそつなくこなして、1日目で
 「自宅のカギを預かって、今度はインターホーンを鳴らさないで入ってきなさいと、言われた。」
 と報告したら、ケアマネジャーは泣き出さんばかりに嬉しがった。
これまでそんなに大変だったのだろうかと、ケアマネジャーに話したが、
 「何時気持ちが急変するか分らないので慎重に。」
 と、舞い上がった気持ちに釘を刺された。
いつも、その気持ちを忘れずにと思って、緊張感を持って接している。高速道路を使用して1時間半掛けて病院へ着く。到着は9時過ぎになるが、会社では始業時間だ。
 ケアマネジャー心配して電話を掛けて来ること多いが、事務所はこの時間ほとんどの人間が外出している。私の携帯電話に転送になる。
 その時間帯は、病院内で動けない。マナーモードにしていて、いつもはあとから掛ける。いつも同じ同行の宏美さんに利用者を任せて外で電話を掛けるが、その、困難事例で対応を心配しているケアマネジャーがその対応している時間に掛けて来る。利用者の側を私が離れて居る間に、トイレ介助が必要となって探して呼びに来ること、この利用者の今までの通院介助3回のうち、2回あった。
 何時も側に居ない、と利用者に思われたのではたまったものではないと心配し、ケアマネジャーにそのことを抗議した。
 20階建てくらいの大学付属病院、で治療を受けるのに概ね2時間待つ。治療に1時間。支払い、薬の受け取り1時間。往復移動時間3時間。合計7時間が基本掛かる時間だ。そのうち、請求出来るのは限られている時間だ。しかし、原価計算などしない大雑把な私なので、どんな請求内容になろうときっちり二人対応で完璧なケアを行う。会社全体で赤字ではないのだから、それでいいと思っている。
 治療室から出て来た時から、既に起き上がれなかった。車椅子での移動なので、そんなに変化があっても分らなかった。病院内で食事をした。いつも同じものを食べると言い、ビーフカレーを食べる。
 この病院へ半年入院にしていて、毎日ビーフカレー。2年通院して毎回ビーフカレー。
「他のメニューを食べたが、これだけしかうまいものが無かった。」
と言う。
 自宅へ戻って来た。足が動かないと言い出した。車から降りられない。どうしようか、とりあえず、
 「負ぶっていきましょうか。」
 と聞いたが、拒否し、
「手摺を伝えば大丈夫。」
と言ったが、足が全く動かないでそれはない。
 「抱えて行きましょうか。」
 と言う言葉には同意。
 ツタンカーメンのように手を前にしてもらい、後ろから手首のあたりを掴んで上半身を浮かせ、宏美さんに足を持ってもらった。階段のところで降りると言ったが、大丈夫と答えて玄関からベットまで運んだ。
 「たいしたもんだ。」
 と言う言葉が出たのには、苦笑した。
2,3時間寝れば大丈夫と言っていたが、心配だったので、
 「必要があれば、連絡して下さい。」
 と言って、余りしつこく留まらずに辞した。その足でケアマネジャーのところへ行って、詳細を報告。ケアマネジャーは頭を抱えていた。ついに来たかという感じだった。
 困難事例ではなく、信念がありその生き方に障害とならないように対応すれば、特別問題視する必要はない。
 仕事をしていた頃は、大きな会社で全国どころか、全世界を回っていたようだ。その時の話しを色々聞かせてくれる。戦争中の話、その後の過ごしたところの話。戦争中の指導者となった軍人の名前を忘れていたりすると、聞いてくるので答える。話の内容が、経済や政治に亘るので良かったと思った。なぜなら、その方面は殊更興味を持って、情報に接していたからだ。
 ほとんどの話の相手が出来た。先日は、
 「関東の人間は、一度信用したらとことん信頼してくれるので、仕事もやりやすかった。大阪の人間は、信頼していても自分の利益しか考えないので直ぐに裏切る。ウソをついたり、邪魔したり。金のことだけしか考えないので、少しでも自分が金を多く貰うことだけで動く。ルールや規則など自分達で破ってしまって、結局みんな壊してしまう。とどのつまり、みんなが損をしてしまう。全国に行くと、大阪の人間と商売したくないと言われる。」
 実績のあるこの方に言われて、私の考えていたことに変な自信を持った。

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