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- トップハート物語(408)立志伝昇竜編
- 11/11/19
- 2003年(平成15年)5月下旬。7月に予定している訪問介護員の講習申請に際して、実技をするところが見当たらない。このような狭い地域で、実技会場を受け入れてくれるところが無い。今まで、デイサービスで空いている日曜日等を利用して実施して来たが、今回も何ヶ所も断られてしまった。受講生の態度が悪くてその会場だけでなく、施設実習も何箇所か失った。
藁をも掴む思いで、あるケアマネジャーにお願した。余りうだつの上がらないケアマネで、期待もしていないが、施設実習でお願したことがあったので電話してみた。
「そこでなければ、ダメですか。」
と、私が依頼した施設ではなく他の心当たりがあるようだった。
「借りられるなら、他でも良いですよ。他、どこかありますか。Wは以前他の地域の施設を借りて問題を起こしたところですが。」
「Wでそんなことがあったの。そこの経営者の息子の管理者N君は友達だ。」
と、そんな具合で余り期待せずに訪れたデイサービス「W」。
なんと、全ての施設の経営者が別のグループで名前だけが一緒という組織だった。たまたま以前借りた施設の社長と同じ名前の責任者で、親族かと誤解してしまった。
「ケアマネのMさんの紹介でしたら、好きなように十二分に使用して下さい。」
えっ、 彼も力になる事があるんだ。
利用者から電話があった。
「お宅は移動介護をしていますか。」
これは支援費の関係だと思って、
「ハイしています。」
その後は、言葉が聞きにくくて確かに障害を持っている方だと思った。経験から、脳性麻痺か脳に障害を持った方で、身体介護を伴う移動介護を要望しているのだ、と直感した。
住所を聞くと、隣の市の在住でまだその市は一件も支援費関係は無い。先日、市から連絡があってパンフレットを作りプロフィルを書いて送った。何でも機会を捕らえて、丹念に対応して置くものだと我ながら納得した。
数時間後に説明に行くことを約束して、市住宅地図を見た。かなりの大きな敷地だった。何時間の受給量なのだろうと、期待をしながら家に向った。
周りの家や整然とした環境とは異なる風景がそこにあった。何となく胸騒ぎがした。
老夫婦が応対に出てきた。障害者が見当たらないが、と思った。名刺を出して、受け取る方がまさか障害者?と疑問を持った。
確認するとまさに、そうだった。話が始まる。障害の移動介護で通院介助をして欲しいと言う。
「ケアマネジャーに聞くと、支援費の方が安いのでそれを使うように。」
と言われた事を説明した。
一体何が障害なのか不思議だったが、目が悪いと言う。話をしていたりそのしぐさを見ていると、疑問があったが障害者手帳も持っているし、確かに支援費の受給者証を持っている。
要介護も想像以上に高いが、介護保険は使用していない。
「通院で足がおぼつかなく心配なので、ヘルパーさんについて来て欲しい。」
と言う事なので、了解した。
支援費の手帳を見ると、30分あたりの負担額が大きい。私が今回の支援費の利用者を見た中では、抜きに出ている。
「支援費を使用するより、介護保険の方が負担額は少ないです。」
「ケアマネジャーが支援費の方が少ないと言ったので、市役所へ言って相談をして手帳を貰った。」
「今現在何回くらい病院へ行きますか。」
「月2回くらいです。」
「1回に大体何時間掛かりますか。」
「全部で3時間くらいです。」
「3時間が2回では、介護保険の方が安いです。10時間を超えると、その超えた分の負担が無いようです。しかし、通院介助だと介護保険が優先ではないですか。」
「市役所からそう言われましたが、ケアマネジャーが、障害の方が安いと言うもので。」
一応の優先順位を話して、隣に座っている奥さんもそう言っていたと言う。
市役所が、近い事業所が良いと2社推薦してくれたと印がしてあるパンフレットを見せてくれた。実兄の会社の方が近いが、当社を推薦してくれたのが、唯一の嬉しさだった。
「3時間ずっと、ヘルパーさんが着いていなくても良い。行きと帰りだけ、着いていて欲しいのですが。ケアマネジャーはそんなことは出来ないと言うのですが。」
「結構ですよ。病院までと、終ったあと連絡を貰って迎えに行きます。片道どのくらい掛かりますか。」
「9時20分のバスに乗って、病院へは 9時40分くらいには。」
と言う言葉を遮って、奥さんが
「10時にはなるでしょう。」
そこから少し言い合いが始まった。
「契約だけは交わして置いて、いつでも使えるように、とケアマネジャーから言われた。」
と、のことだった。
「それでは、月2回という事で暫定的に金額を明示しておきます。」
「いや、月1回です。使うか使わないか分らないですよ。」
先ほどは月2回と言っていたが、支払いは実績によるので、契約書に書いても関係が無いと説明しても納得しない。
奥さんが、
「気まぐれだから、お願いするかどうか分らないです。お願いしても、急にお断りすることもあります。」
「大丈夫です。色んな人が居ますから。しかし、介護保険では相当の金額が使えますが、全く使用していない。支援費も使わない。特に支援費は、2ヵ月後の見直しですのでどのような判断を下されるのか分りませんよ。使用するから自分で申請したのであって、使用しないのであれば必要ないということですから。」
「そうですよね。この人は、都合の悪い時だけ見えないんだから。」
と奥さん。
「支援費の負担額が大きいので、収入が相当ありますね。」
「年金に、企業年金、郵便年金、株式の配当・・・」
自慢げに話す。そのほとんどを使っていないのが分る。公的なものを使うように申請はするが、個人負担があると使用しない。
帰りながら、余りにも詰まらない生き方に、哀れさを感じていた。外へも出ないし、仲間も居ないと奥さんは嘆いていた。奥さんをこき使って、徐々に老いて行くのか。これからの余生が垣間見れた。暫くは、その生き方見守る事にした。
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