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トップハート物語(390)立志伝昇竜編
11/10/24
2003年(平成15年)5月中旬。妻から電話があった。最初は、咳が出ないように何とか我慢していたが、何度も止まらない連続的な咳が出るので、
 「前に風邪薬送った筈だから、探して飲みなさいよ。」
 と言って切られた。
 前夜の凄い咳き込みに、体力は最悪の状態だった。目からヤニがたくさん出て、まぶたがくっついて、それこそ見えにくい。
 アルバイトの持ってきた風邪は本当にひどい風邪だ。本人自身も激しい乾いた咳をしていたが、マスクもその対応もしないで拡散していた。休ませるに休ませることが出来ない。かなり重要な、そして、時間に追われている仕事をしている。
 最初、支援費の中年男性責任者へうつった。その者から、自分にうつった。続いて、管理責任者の菊ちゃんにうつった。彼女は現在闘病中で、仕事をしたり休んだり。
 そして、移動時に運転して貰っている智子さんも喉がおかしい、食欲がなくなって来たなどと言うようになった。
 「今日から出社しないように。自宅で仕事をするように。用事がある時は、呼び出します。」
 その様な辞令を出した。 
今日の新規調査は、このような体調なので、管理責任者の菊ちゃんに行って貰おうと思っていたら彼女の方が、かなりの重症。私が行くことになってしまった。 
 最初の面談で利用者に開口一番、
 「お宅を目の前にして悪いのだけれど」
 と言ったあと、ケアマネジャーに向って
 「どうしてこんな遠くの勝手の悪い事業者に頼んだんだ。お宅の事業所でもヘルパーさんを派遣しているだろう。」
 「ええ、そうなんですけどこれからの介護環境の展開と利用者さんの要望などを考えると、この事業者が一番良いのではないかと思われるのです。」
 私も口添えをさせて貰って、
 「事業所は遠方にあってもヘルパーさんは近くの人を選定します。そのヘルパーさんは、事務所へ来てから仕事へ行くのではなく、直行しますので何も問題は有りません。」
 それに対しては何も言わなかった。
 多くの病気を抱えて、一度病院へ行くと一日掛りで見て貰う。しかし、歯科だけは他の日になっていて
 「時間が無駄だ。」
 と言うようなことを言ったようだ。
しかし、頭がボーっとしている私は、ほとんど話を聞いていなくて、
 「時間が無駄だ。」
 と言う言葉だけが残ってしまった。
この日の面談の時間が無駄だと言われたと勘違いしたのだろう。最初の言葉と兼ね合わせて、口から出た言葉は、
 「誰にとって無駄なのですか。」
 ときつい調子で返事してしまった。驚いて、利用者はジッと私の目を見返して暫くの間を置いて、
 「私のです。」
 と応えた。
それからは、話がスムースに進んで何とかうまく行った。長い時間、1時間を裕に超える話をしていたので、ケアマネジャーがそわそわしていつか口を挟んで終らせようと必死だった。
 心配なのは、歩けないので外にどのようにして出してくれるのかだった。車椅子で病院まで行くが、車椅子まで何とか行かせて欲しい。背負って出るか、少しでも手すりを使って歩いてもらうか。
 ケアマネジャーが必死になって、
 「はって出る事も出来ませんか。」
 等と模索していた。
 「大丈夫です。当社で何とかしますので安心して下さい。必要があれば、何人かで移乗して、そのあとはヘルパーさんが連れて行きます。帰りもまた、複数で対応します。勿論、当社が行う安全確保の為ですので、料金は一人分ですので安心して下さい。」
 その様な話をして、
 「実は、先日変更申請をして要介護4になると言われていたのに、結局今と同じ3だった。そのために点数の問題もあるので。」
 「現在障害者の1級を持っていると聞いているのですが。」
 おもむろに、障害者手帳を取り出した。
 介護保険で補えない部分については、障害者の支援を受けられることを話した。しかし、側にケアマネジャーが居るのでそれほど詳しい話は出来なかった。
 最初から何度も言っていた事は、
 「風邪が一番怖い。」
 その言葉を聞いて、出された紅茶を少しずつ何度も飲み、喉を潤して咳が出ないよう注意した。

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