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トップハート物語(388)立志伝昇竜編
11/10/19
2003年(平成15年)5月初旬。毎年だが、ゴールデンウィークとは無縁な時を過ごしている。風邪は芳しくなく、咳と痰は激しい。
 少し早めに事務所へ行った。暫くしても誰も出てこない。9時を過ぎても誰も来ない。私は運転が出来ず足が無いので、遠くへは誰か来ないと動けない。予定していたアルバイトは、休暇。いつも側で助けてくれる智子さんは朝の7時から夜の8時までびっしり仕事が詰まっている。
 その彼女が、近くの利用者宅で掃除中心の家事援助をした。ところが、そのことで先日家族へ出来る範囲の話をしたことを無視している。
 88歳の方の援助依頼で掃除が中心だという。その時にも、居室以外は出来ませんと言ったし、通院介助と認知症がりガスを使用するので調理を含めて、時間が余れば掃除と言われていた。
 同居人は障害者1級なので、共用スペースを掃除するのは認められる可能性があるが、この日は息子さんが休暇だった。それなのに、風呂掃除をさせられたと言う。物凄く汚かったと言っていた。2階に本来掃除すべき旦那さんがいて、88歳の利用者の為に介護に行っているのに、風呂掃除をしないといけないのか。
 そのことを聞いて、連絡しようとしたが連絡ノートに書いて来ましたというので、相手からの連絡待ちとなった。
 大体、掃除だけではそんなに時間は要らない。障害者1級のお嫁さんの為の支援費申請を進めたのに。
 必要資料を本社へ持って行けないので、事務所で仕事をすることとした。始めて少し過ぎた頃から、横になりたい衝動にかられた。寝具一式は部屋にあるので、枕を持って来て、横になった。
 まるで見ているように、何度も何度も電話が鳴った。ウトウトすると電話が鳴る。本社新人男性からの電話攻撃には閉口した。朝早くから夜遅くまで。
 この日は支援費関係の請求書類を完成させるのに、みんなで読み合わせをするので集合を掛けたが、一人しか集まらない。
 管理責任者の菊ちゃんは、風邪がひどくて寝込んでしまった。アルバイトが持ち込んだ風邪が蔓延して、事務局で4人目になった。あと二人引いたら大変なことになる。
 昼は近くのマンションの自室へ戻って昼食をとった。と言っても、食欲が全く無いのでソーメンを液の素を薄めてつけて食べただけだ。その間も追うように電話が鳴り、気の休まるところがない。
  事務所へ戻ると、昨日の障害者を紹介してくれた全身性障害者のT君から電話があった。自分が紹介して話をしたA君が物凄い勢いで怒って来たと言う。
 「昨日話した人は誰ですか。」
 「私ですよ。」
 「そのことで、ウソをついて違反を犯している。警察に行って来たと言ってました。」
 「どんなことが違反なのですか。」
 「ガイドヘルパーは1対1が原則なのに、他のヘルパーさんも着いて来た。それは完全に違反だというのです。」
 「体重100キロ近くの君を移動させるのに、一人では絶対無理なところがある。そのために、男性ヘルパーと女性ヘルパーを着けた。利用者の了解を得ない、又は利用料を人数分取るなどの行為があれば問題だが、ひと月終って料金を人数分請求したことがありますか。」
 「そうですよね。私もA君がそんな人間だとは知らなかったのです。全部出鱈目だとか訳が分らないことを言っているのです。」
 そんな話を暫くして、
 「それで、何だというの。とにかくお互いに断っているのだからそれで良いのでは。」
 「僕もそう言ったのですが、どのように返事をすれば良いですか。」
 「どういうこと。」
 「いや、『一応昨日話した人と話して、お前が良ければ契約する。』と言うのです。」
 「何を訳の分らないことを言っている。とにかく、そんな支援以外で手の掛かる利用者とは取引したくないので、断って下さい。」
 そのように返事をして、この問題は決着を着けたかった。
「お前もそんな変なとことの契約は早く止めるようにと言われた」
と言っていた。
 あのような精神では、誰もヘルパーさんが居ないのがうなずける。

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