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トップハート物語(375)立志伝昇竜編
11/10/03
2003年(平成15年)4月中旬。いつも朝5時までに起きる。自分の住んでいるマンションの部屋が事務所にもなっているのでパソコンに電源を入れて、各種情報を収集する。他の事業所への指示を流す。前日来たメールへの返事を作成する。
嬉しいことに、面接を繰り返し社員として採用を目論んでいた男女2名の若手が、当社に来る事の決断をしてくれた。
 一人は隣の市の職員の地位を投げ打って、5月から来る予定。だが、そのメールには
「いまだ退職願が受理されない。しかし、もう行かないと言ってある。」
などとあった。
 また、現在、雇用能力開発機構で経営管理、労務管理の勉強中の大手専門学校の才色兼備の教務主任は
「お世話になりたい。」
と連絡があった。25日卒業で、その次の日から出社予定。
 それにしても、市の職員の人件費の高さには驚いた。施設と言えば、民間はかなり厳しいのが現状。当社は以前の待遇をスライドする基本姿勢にある。年俸制をとっていて、12分の1を支給。その金額はかなり高い。31歳の男性介護福祉士だ。障害者が事の他好きで、異常という称号が付く。
 問題は大手専門学校の教務主任で、経理総務も担当していた。どのくらいか想像もつかない。お互いに、その条件だけは口に出さないし、出せない。36歳、介護福祉士。大手専門学校で人事、経営管理などの経験が豊富で当社ではステージが狭すぎる懸念があった。 
 市の職員男性が言っていた。
「ただ居れば貰える。遊んでいても貰える。みんな仕事をしない。入所者のことなんか考えていない。みんな自分のことばかりしか考えていない。これで福祉なんてトンでもない、と疑問に思っていました。」
 8時半に事務所へ入った。電話が鳴った。
 「早いですね。今日の予定と昨日の報告ですが、そちらへ行きましょうか。」
 私の居る事務所で、支援費関係の責任者ガマと打ち合わせをしていた。
 9時近くに、ヘルパーさんが来た。実は、前日相談があった。急に仕事がなくなって生活がして行けなくなる、と。
 実際、前月は11万くらいの収入があったが、今月は激減する。登録ヘルパーさんの現実だ。仕事がなければ、収入がなくなる。
 しかし、子供3人を抱えて深刻な問題だ。丁度、講習関係での事務的な仕事があったのでそれを手伝って貰い、合間にケアをして貰うように決めた。
 9時半という約束だったが、9時に来た。本人は、時間前に来たという事で意欲を示したところだが、当方はやはり9時半に予定を入れているので、困ってしまったが相手出来ないので時間まで待機させた。
 ヘルパーさんの給与計算、利用者との契約書の作成をして、通院介助へ出かけた。
 もう2年以上担当している、新人王も取った元プロ野球選手で、2名のヘルパーさんが必要となっている。
 厚生年金病院へリハビリをしに、全ての行程を含めて3時間。
 午後2時半に自室へ戻り、昼食。その後、支援費関係の打ち合わせを終えて、午後5時に事務所を出て通院介助へ。新規なので、慌てて契約書を作成して持参した。
 お嫁さんが運転する車で、大きな利用者を乗せて病院へ。合わない福祉機器を持って業者が待っていた。そばで見ていたが、どう見ても快適に使用するのは無理で危険性が高い4本足の杖だ。バランスを崩したらどのようになるか想像がつく。
 どのように返事するかなと思って見ていたらケアマネジャー、お嫁さんとも
 「無理ですね。」
 と言ったので安心した。
今までは、利用者が言いたくても言えない、ケアマネジャーが押し付ける、そんなパターンが多かった。
 診察に行ったが、その理由を何となく車の中でお嫁さんが話した。
 「今後どのように対応したら良いか、診察の結果を見て判断したいので連れて行きます。先生は、自宅で見るのが大変なら預かりましょうか、と言っているのですが。」
 そんな内容だった。面倒見の良いお嫁さんで、さぞ、居心地が良いだろうなと感じていた。
 外から、診察室がカーテンで仕切られているので診察中の会話が聞こえた。
 「施設に入るのと、自宅で過ごすのはどちらが良いですか?」
 「どっちでも良いです。」
 お嫁さんの立場がない。内実は、異なっているのかもしれない。そう言えば、なんだかんだと言いながら、デイサービス体験時は送り出し用に2名のヘルパー要請、今夜は杖を突いて歩かれるまでに回復しているので、1名。お嫁さんは全く近付かない。
 夜も更けて8時近くに事務所へ戻る。支援費関係を再び打ち合わせ。この日も、新規で1件利用者から契約希望の連絡が入った。支援費関係は、順調に進んでいる。実はもう1件紹介が入ったが、どうやら内容を聞くと高齢者の関係で介護保険となりそうだ。
 夜9時半自室マンションへ。自炊の夕飯。今日の献立は、「ニラ豆腐」「焼き魚(ブリ)」「ジャガイモ・ニンジン・鳥挽き肉の煮物」「たくあん・昆布の佃煮」「サトイモ・セリの味噌汁」「佐渡のコシヒカリ・お点前用茶碗軽く1杯」
 情報の点検、資料作成。
 深夜就寝。
この頃のある1日の行動だった。
あとは、大東本社の初老女性社員と家族とヘルパー一族郎党が手を打って来るのを待っているだけだ。こちらの準備は既に出来ているのだ。
中国の兵法三十六計には勝利するための戦略が書かれている。今回は、そのうち李代桃僵(りだいとうきょう)を選択した。兵法三十六計の第十一計にあたる戦術だ。
『損害を受けざるを得ないときには、不要な部分を犠牲にして、全体の被害を少なく抑えつつ勝利する。』
目先の損害より、不要な部分を切り捨てた事による意識の統一や、方向性の確立によって残った人材がより以上の力を発揮する事により、以前より増して結果を出す事が出来る。その通りの結果となったのは、その後の経過を見れば分かる。この年初めて1億を超えた売り上げが、数年で2倍の2億円になり7年後の昨年は3億円に近付く結果となった。

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