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- トップハート物語(373)立志伝昇竜編
- 11/10/01
- 2003年(平成15年)4月上旬。携帯電話が鳴った。
「今どこに居ますか。」
「事務所です。」
「今日で辞めさせて頂きますので、引継ぎの方を決めて置いて下さい。今掛かっている仕事は、今日中に片付けて行きます。給与は適当に決めて振り込んで置いて下さい。」
「どうしたんですか、突然。」
「社長の考え方について行けなくなりました。」
「どんな考えですか。」
「いや、もういいじゃないですか。」
先日採用して、支援費関係を任せたガマからだった。何がなんだか分らない。先日までは
「社長の考えに賛同して、とことんついて行きます。」
と言っていた口から、全く逆な言葉が出て驚くやらあきれるやら。
私の目でその業務振りを見ても、優良社員とは言い難い。しかし、中途半端だが、どこか憎めない。
辞めるなら仕方がない、頭の中は次の人選に移っていた。しかし、今の「社長の考えについて行けない」という言葉が看過出来ないので、隣のマンションにある支援費関係の事務所へ行った。
「どんな理由ですか。労働条件は要求通り全部受け入れているはずです。何が問題なのですか。」
「収入の問題ではありません。先日、お兄さんの事務所から備品を貰う時に、私も手伝わされました。確かに、私を使うと原価が安くて良いでしょう。しかし、他の人はその時間1400円を得ている。私は一銭も貰えない。私は支援費の関係で忙しいのです。そんなことしている暇がないのです。」
「よく分りませんが、どうしてその時断らなかったのですか。」
「管理責任者に昨夜電話して聞きました。そばに社長がいたと言っています。」
「待って下さい。管理責任者が何を言ったのか分りません。その業務に関しては、彼女に任せていたのですから。誰に頼んだかも、時給の事も分りません。」
「彼女のニュアンスは社長が決めたような言い方をしていました。」
「彼女一流の逃げ口上です。必ず何か起きると、人のせいにするのが悪い癖なのです。私が指示をしたというのなら仕方がないが、側に居たかもしれないがそんな備品受け取りの人選なんて気にしていない。任せたら任せっ切りなのが私の性格だと知っている筈です。だから、君には支援費を全部任せているではないですか。」
「今日の予定ですが、西さんと、村山さん、坂上さんのところに行って・・・。17日は市の説明会があり、25日には事業者の集会に出ます。」
何も言わずに、この日以後の予定を話して、残ることを表現した。
何がなんだか分らないが、表面はひょうきんさを出していたが、彼はプライドの高い人間であることに気付いた。
この日の彼は、一日中走り回って夜9時過ぎに私と最終打ち合わせをして、二人で帰宅した。
「若い細身の女性でなければ、他の事業所に変更する。」
と、視覚障害者が申し立てていたが、そのことについても管理者責任者と支援費関係責任者が対立していた。その内容を聞くと管理責任者は、
「佐藤さんは、必ず利用者の希望に応えてヘルパーさんを探さないと怒る。」
と彼に言っていたらしい。
トンでもない。私が彼女に指示したのは、
「市役所へ報告して、利用者にその様なヘルパーさんが居ないと断りなさい。」
と言った筈だった。
支援費の責任者は、私の目の前で市の担当者へ連絡した。
「利用者と話して、希望するヘルパーさんが居ないという事で事業所を変更する事もあります。」
その程度の認識が、市の担当だとは呆れ果ててしまった。
午後電話が市からあった。
「結構です、ということです。」
「結構ですとは、どのように結構ですということですか。事業所を替えるから当社からの派遣は結構ですということですか。」
「いえ違います。お宅の事業所の派遣で結構です、ということです。細身とか若いとか指定するのは失礼じゃないですか、仕事の内容にクレームがあるなら仕方が有りませんが、他の事業所も同じだと思いますと言うと、分りましたと言っていました。」
指導もいいが、視覚障害者として支援費の認定を受けている利用者が、何でそんなことを言うのかその方が問題。市に指導が必要ではないか。
忙しいのは忙しいが、自分が利用者へ訪問するのが余りなくなってしまった。高齢者関係の調査なども、先月から採用した他のサービス提供責任者が実施している。支援費も3月までとは違ってガマがほとんど対応するようになった。
講習関係も社員がフットワーク良く動いてくれる。
日々の仕事の中で、出掛ける機会が少なくなった。体が楽になったのに、何となく疲れが体中感じられるようになった。
近くの自宅マンションに、昼戻って横になった。夕方は、事務所でウトウト。
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