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トップハート物語(371)立志伝昇竜編
11/09/29
2003年(平成15年)4月中旬。立て続けに、男性利用者に悩まされている。
 「月一回の通院が点数オーバーになる虞があり自費でお願いしたいのです。本人に確認して、いくらで行けるか話し合ってくれますか。」
 男性利用者の対応依頼がケアマネジャーからあったのは、私が埼玉に帰省している最中だった。もう何度も通院介助をしているが、今までは行き帰りのみ見守り程度の依頼だが、当社が誇る美人ヘルパーさんに目移りしてその場で病院内付き添いを強く要求して変更してしまう。
 その通院介助があった後の何回かの家事援助は、ケアマネジャーがキャンセルしてしまう。何度も同じことが続くので、ついにケアマネジャーもプラン変更ではなく、自覚させる為に自費を持ち出したのだろう。
 調整担当から利用者本人に連絡をして、当社の身体介護の自費の金額は1時間2000円であることを告げると、断られたという。自分で行くと言い、その報告をケアマネジャーにした。
 既にこの利用者の担当ヘルパーは何人も替わっており、利用者本人は何故変更したか聞きもしない。ヘルパーさんに慣れると、段々と手が出てくる。言葉の段階で嫌だと言うヘルパーさん、手が出るまでは我慢しているヘルパーさん、手が出てもその程度ならと意に介さないヘルパーさん。
 色んな種類で変更したが、結果的にはセクハラなのだ。今度のヘルパーさんは、ガイドヘルパーさんと兼任で、高齢者を担当するのは初めてだ。それまでガイドヘルパーとして移動介護の時に、利用者にお茶を誘われれば受けるのが当然という仕事をして来た。
 先日、当社調整担当からの報告で
 「ガイドさんが喫茶店に誘われたので一緒に行きましたと報告がありましたので、今後は絶対断って下さいと言って置きました。」
 「まだ、変更したばかりで分らないのだろう。」
 「いや、それでも仕事が終ってボランティアで行ってもダメですかと聞いてきました。絶対ダメですと、何度も言いました。」
 これから、どのようなことになるのかこの男性利用者と、ガイドヘルパーさんの実績しかないヘルパーさんが心配の種。
 きっとまた、その男性利用者は電話を掛けて来て、
 「やっぱり通院心配だから、あの子をつけて欲しい。願いを聞いてくれたら良い事もあるから。」
 と言って来るに違いない。
 事務所へ顔を出した時に、調整担当者が
 「視覚障害者の方ですが、若くて細い女性でなければダメだと言うのですが。」
 「ウソだろう。」
 「本当です。そんな要求に応えて出す訳に行かないでしょう?」
 「当たり前だ。いないと断って、市に報告するように。」
 実は、市から紹介があって対応した利用者だが、視覚障害者の家事援助で掃除が中心だった。1日目に五十代のヘルパーさんを派遣したが、
 「掃除をきちっとしない。自分が掃除した。」
 と言って断って来た。
その後、二十代のヘルパーさんを派遣したが、
 「続けて来て欲しい。」
 と本人に言ったようだが、
 「ハイ、と返事しましたが全身をジッと見ているようで気持ちが悪いので辞めたい。」
 と、ヘルパーさんから言って来た。
 その言葉を受けて、40歳代の調整担当が利用者へ面談に行った。その内容を、入浴介助が終った夜9時頃に調整担当から電話で聞いた。
 「本当に気持ちが悪い。若くて細い女性でなければダメと真顔で言っています。笑いながら冗談めかして言うのであればまだ良いのですが、本当に不気味です。」
 市から私を名指しで紹介を受け、ガイドヘルパーさんを派遣してくれと電話があった視覚障害者の方がいた。その方の唯一の条件が、
「守口市のガイドヘルパーの経歴の持ち主は除外してくれ。」
というものだった。
 理由が分らずに、何とか社員を派遣していたが、視覚障害者の移動介護は資格者か実務経験者以外は担当出来ないので、かなり不自由をかこっている。
 どうやら、その男性視覚障害者は手が出てかなりきわどい問題を起こしている常習犯らしい。市のガイドヘルパーさんはみんな知っていて、その利用者が言わなくても市の登録ヘルパーさんから断るといういわく付きの方なのだ。
 春の風が、桜の花を少しずつ散らして葉桜に変身して来た。 
 あれ以来、妻から毎日電話が掛かって来るようになった。
「生活に必要なモノを買って来たので、明日送るから。」
という。
外に出なかった日々を取り戻すかのように、思い過ごしの暗い日々を取り戻すかのように、桜の花を惜しむかのように、視覚を失う恐怖を乗り越え、いつもの繰り返す季節を感慨深く見つめていることだろう。
何でもない日々が幸せな日々だというように。

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